2004年 08月 11日
モーニング。 |
「おはようございます、橋本先輩。」
自販機の前で何を飲もうか思案していた時、横からその声の主の手が伸びてきたと思ったら、「あったかい」のコーヒーのボタンを押した。
「…雅明。こんなくそ暑い時に悪ふざけはよせよな。」
隣で雅明が意地悪そうな表情で笑っていた。馬鹿にしてるわけじゃない、いつものからかいだ。
藤本雅明、俺がまだ企画課にいたときの後輩だ。何故かはわからないが、俺はこいつを後輩達の中で一番可愛がっていたような気がする。仕事の能力があり、動作もてきぱきしていて、一つの物事に無駄な時間はかけない。自分の手を煩わせるような失敗をしたこともない。今まで教えてきた後輩の中で一番優秀だった。
「窓際族への餞別ですよ。」
ホットコーヒーを取り出して、雅明が俺に手渡しながら言った。
「窓際族」なんて言葉を本人を目の前にしてはっきり言うやつはせいぜい雅明ぐらいだろう。それが原因でなかなか同僚と折り合いがついてないらしいが、かえって俺は雅明のそのさばさばしたところが気に入ってるんだと思う。
「プレゼンの調子はどうなんだ?」
もう一度買いなおすのも面倒なので、そのままホットコーヒーを開けて口にした。…やっぱり暑いじゃないか、ったく。
「別に急いでやるような内容でもないんで、まぁ手ぇ抜きながらやってますよ。」
俺にはホットを選んだくせに自分は自販機でアイスコーヒーのボタンを押している。勝手なやつだ。
「そうか。せいぜい大きな失敗でもやらかして、早く窓際に来いよ。」
皮肉をたっぷり込めて、俺は雅明にこう言った。…あながち嘘でもないのだが。雅明はさっきのように笑って、企画課へと戻っていった。
席につくと、何やら視線を感じる。辺りを見回すと見つめていたのは…雅明と同じ企画課に所属している川崎智子だった。どうやらコピーを取りに来たようである。しかし、何でかわからないが彼女が送る視線はどうも同情やら軽蔑やらとは違う感じがする。…やめよう、前から疑問に思っていたことだが考えるのも面倒くさい。きっとそんな風に見えるだけなんだろう。
「さて、さっきの続きでもするか。」
朝から行っていたサイトのチャットに再び入った。ちなみに俺が使っているHNは「bridge」。橋本から取ったもので別に意味はない。
『bridgeっていうんだ、かっこいい名前だね!』
初めてここに参加した時、「マコト」というHNの女性が言っていたことを思い出した。彼女とは最初に話し掛けてくれたということもあってか、今では一番親しい友人だ。
「マコト」は誰の目から見ても明るく、社交的で親しみやすい人間だ。彼女がいるといつも会話が盛り上がる、いわゆるムードメーカー。嫌っている人などたぶんいない、まるでクラス人気者、といった存在のように感じられる。
だが…彼女は時々、ほんとに時々なのだが人間関係に疲れたようなそぶりを見せる。恐らく、その面は自分だけしか気付いていないだろう。本人でさえも、気付いていないように感じられる。無意識に出てきてるものなんだろう。
「もしかして、普段もそんな風に周りに愛されていて、でも時々疲れてしまってるのではないか。無理して周りに合わせてしまう時もあるのではないか」
チャットで会話を交わしながらこんなことをいつも思ってしまう。会ったこともない人物のことなのに、何故か俺は心配していた。理由は自分でもわからない、妙にひっかかってしまう存在でもあるのだ、彼女は。
『おはよう!今日も一日頑張ろうね(^_^)』
チャットに参加すると早速、「マコト」から声を掛けられた。
自販機の前で何を飲もうか思案していた時、横からその声の主の手が伸びてきたと思ったら、「あったかい」のコーヒーのボタンを押した。
「…雅明。こんなくそ暑い時に悪ふざけはよせよな。」
隣で雅明が意地悪そうな表情で笑っていた。馬鹿にしてるわけじゃない、いつものからかいだ。
藤本雅明、俺がまだ企画課にいたときの後輩だ。何故かはわからないが、俺はこいつを後輩達の中で一番可愛がっていたような気がする。仕事の能力があり、動作もてきぱきしていて、一つの物事に無駄な時間はかけない。自分の手を煩わせるような失敗をしたこともない。今まで教えてきた後輩の中で一番優秀だった。
「窓際族への餞別ですよ。」
ホットコーヒーを取り出して、雅明が俺に手渡しながら言った。
「窓際族」なんて言葉を本人を目の前にしてはっきり言うやつはせいぜい雅明ぐらいだろう。それが原因でなかなか同僚と折り合いがついてないらしいが、かえって俺は雅明のそのさばさばしたところが気に入ってるんだと思う。
「プレゼンの調子はどうなんだ?」
もう一度買いなおすのも面倒なので、そのままホットコーヒーを開けて口にした。…やっぱり暑いじゃないか、ったく。
「別に急いでやるような内容でもないんで、まぁ手ぇ抜きながらやってますよ。」
俺にはホットを選んだくせに自分は自販機でアイスコーヒーのボタンを押している。勝手なやつだ。
「そうか。せいぜい大きな失敗でもやらかして、早く窓際に来いよ。」
皮肉をたっぷり込めて、俺は雅明にこう言った。…あながち嘘でもないのだが。雅明はさっきのように笑って、企画課へと戻っていった。
席につくと、何やら視線を感じる。辺りを見回すと見つめていたのは…雅明と同じ企画課に所属している川崎智子だった。どうやらコピーを取りに来たようである。しかし、何でかわからないが彼女が送る視線はどうも同情やら軽蔑やらとは違う感じがする。…やめよう、前から疑問に思っていたことだが考えるのも面倒くさい。きっとそんな風に見えるだけなんだろう。
「さて、さっきの続きでもするか。」
朝から行っていたサイトのチャットに再び入った。ちなみに俺が使っているHNは「bridge」。橋本から取ったもので別に意味はない。
『bridgeっていうんだ、かっこいい名前だね!』
初めてここに参加した時、「マコト」というHNの女性が言っていたことを思い出した。彼女とは最初に話し掛けてくれたということもあってか、今では一番親しい友人だ。
「マコト」は誰の目から見ても明るく、社交的で親しみやすい人間だ。彼女がいるといつも会話が盛り上がる、いわゆるムードメーカー。嫌っている人などたぶんいない、まるでクラス人気者、といった存在のように感じられる。
だが…彼女は時々、ほんとに時々なのだが人間関係に疲れたようなそぶりを見せる。恐らく、その面は自分だけしか気付いていないだろう。本人でさえも、気付いていないように感じられる。無意識に出てきてるものなんだろう。
「もしかして、普段もそんな風に周りに愛されていて、でも時々疲れてしまってるのではないか。無理して周りに合わせてしまう時もあるのではないか」
チャットで会話を交わしながらこんなことをいつも思ってしまう。会ったこともない人物のことなのに、何故か俺は心配していた。理由は自分でもわからない、妙にひっかかってしまう存在でもあるのだ、彼女は。
『おはよう!今日も一日頑張ろうね(^_^)』
チャットに参加すると早速、「マコト」から声を掛けられた。
by eight_door
| 2004-08-11 16:07
| なかちっぱ