2004年 08月 18日
敵対心。 |
よんよ> 本当の愛がここのチャットで見つかるって友達から聞いて、今日初めて来たんだけ
ど…
朝早くからマコトと二人で話していたら、見慣れないHNの奴が入室してきた。入ってきて第一声が「本当の愛を探しに来た」なんて、今までここの部屋で見たことがない。「ロマンチストなのか?」と、思わず俺はパソコンの前で笑ってしまった。
bridge> ここに来てそんなことを口にしたのは多分あなたが初めてですよwよかったら何があったのか、自己紹介も兼ねて話してくれませんか?
何だか面白そうだなと思い、俺はなるべく穏やかな口調でよんよに話し掛けてみた。するとよんよは出来る限りわかりやすく、自分のことを話してくれた。暫く黙って聞いていた俺は、次第によんよという人物に興味を持ち始めた。こいつと自分は明らかに違うタイプの人間だが、似たような「もの」を持っている気がする。それが何か、言葉ではうまく説明することが出来ないのだが。
よんよ> こんなだらしない男の話長々と聞かせちゃって、ほんとすみません(汗)
一通り話し終えた後で、よんよはこう言った。夢中で聞いてて気付かなかったが、部屋にはいつのまにかいつもの常連が集まり、マコトはそっちの人たちと話し始めていた。
bridge> 今のあなたが、「本当のあなた」なんですよ。
よんよ> 本当のオレ?
数分後。
よんよとの会話も一段落したところで、トイレに行こうと席を立った。トイレに行く途中に企画課の前を通ったので、ちらりと中を覗いてみた。
企画課の中では、忙しいのか相変わらず同僚がせわしなく動いている。その中で雅明の姿を発見したが、何やら今まで見たことのないような柔らかな顔つきで、パソコンの前に座っているではないか。
「あいつ、ほんとに仕事してんのか?」
殆どの人間ががぱたぱたと机の間を行ったり来たりしている中で、雅明は我関せずと言わんばかりに席から動かない。ほんとにいいご身分である。
「橋本。ちょっとそこどいてくれないか。」
顔を向けると最近大阪支社から本社へ帰ってきた同期の吉岡が入り口の横に立っていて、蔑むような目でこちらを見ながら言った。
「ああ、すまん。」
「…いいご身分だな。」
「は?」
自分の考えていたことが見透かされたのかとびっくりして、思わず変な声を出してしまった。
「あれだけ大きな失敗をやらかしといて、よくもまぁぬけぬけと庶務課にいられたもんだな。」
二年前。実は俺と吉岡はあの失敗したプロジェクトで同じチームだった。一応俺がリーダーという形を取っていたのだが、ほんとのところ…殆ど吉岡と手を組み二人で進行していたのだ。
あの頃は、プライベートでもよく二人で飲み屋で酔いつぶれるくらい酒を飲みながら、プロジェクトについて語り合った。お互いの夢を託した仕事だったし、俺たちはそれに生きがいを感じ、そして毎日が輝いていた。
だが…そのプロジェクトは失敗、おまけに自分の私的事情も絡んで結果は最悪なものとなった。
俺は全責任を負って庶務課に移動、吉岡はもう一度修行させる、という形で大阪支社に飛ばされてしまった。もしかして自分の事情が絡んでいなければ、こういう自体にはならなかったのかもしれない。
吉岡はチームの中で唯一事情を全部知っていた為、彼の怒りの矛先は全て俺に向けられた。本社で功績をあげようと意気込んでいた矢先の出来事だったため、彼の落胆は計り知れなかった。
「…俺は絶対お前を超えてみせる。お前の後輩の藤本にだって、負けないからな。」
こっちを睨みながらきびすを返すようにして、吉岡は企画課へと入っていった。
仕事において既にやる気が失せていた俺は、そんな吉岡の姿を黙って見つめていることしかできなかった。
ど…
朝早くからマコトと二人で話していたら、見慣れないHNの奴が入室してきた。入ってきて第一声が「本当の愛を探しに来た」なんて、今までここの部屋で見たことがない。「ロマンチストなのか?」と、思わず俺はパソコンの前で笑ってしまった。
bridge> ここに来てそんなことを口にしたのは多分あなたが初めてですよwよかったら何があったのか、自己紹介も兼ねて話してくれませんか?
何だか面白そうだなと思い、俺はなるべく穏やかな口調でよんよに話し掛けてみた。するとよんよは出来る限りわかりやすく、自分のことを話してくれた。暫く黙って聞いていた俺は、次第によんよという人物に興味を持ち始めた。こいつと自分は明らかに違うタイプの人間だが、似たような「もの」を持っている気がする。それが何か、言葉ではうまく説明することが出来ないのだが。
よんよ> こんなだらしない男の話長々と聞かせちゃって、ほんとすみません(汗)
一通り話し終えた後で、よんよはこう言った。夢中で聞いてて気付かなかったが、部屋にはいつのまにかいつもの常連が集まり、マコトはそっちの人たちと話し始めていた。
bridge> 今のあなたが、「本当のあなた」なんですよ。
よんよ> 本当のオレ?
数分後。
よんよとの会話も一段落したところで、トイレに行こうと席を立った。トイレに行く途中に企画課の前を通ったので、ちらりと中を覗いてみた。
企画課の中では、忙しいのか相変わらず同僚がせわしなく動いている。その中で雅明の姿を発見したが、何やら今まで見たことのないような柔らかな顔つきで、パソコンの前に座っているではないか。
「あいつ、ほんとに仕事してんのか?」
殆どの人間ががぱたぱたと机の間を行ったり来たりしている中で、雅明は我関せずと言わんばかりに席から動かない。ほんとにいいご身分である。
「橋本。ちょっとそこどいてくれないか。」
顔を向けると最近大阪支社から本社へ帰ってきた同期の吉岡が入り口の横に立っていて、蔑むような目でこちらを見ながら言った。
「ああ、すまん。」
「…いいご身分だな。」
「は?」
自分の考えていたことが見透かされたのかとびっくりして、思わず変な声を出してしまった。
「あれだけ大きな失敗をやらかしといて、よくもまぁぬけぬけと庶務課にいられたもんだな。」
二年前。実は俺と吉岡はあの失敗したプロジェクトで同じチームだった。一応俺がリーダーという形を取っていたのだが、ほんとのところ…殆ど吉岡と手を組み二人で進行していたのだ。
あの頃は、プライベートでもよく二人で飲み屋で酔いつぶれるくらい酒を飲みながら、プロジェクトについて語り合った。お互いの夢を託した仕事だったし、俺たちはそれに生きがいを感じ、そして毎日が輝いていた。
だが…そのプロジェクトは失敗、おまけに自分の私的事情も絡んで結果は最悪なものとなった。
俺は全責任を負って庶務課に移動、吉岡はもう一度修行させる、という形で大阪支社に飛ばされてしまった。もしかして自分の事情が絡んでいなければ、こういう自体にはならなかったのかもしれない。
吉岡はチームの中で唯一事情を全部知っていた為、彼の怒りの矛先は全て俺に向けられた。本社で功績をあげようと意気込んでいた矢先の出来事だったため、彼の落胆は計り知れなかった。
「…俺は絶対お前を超えてみせる。お前の後輩の藤本にだって、負けないからな。」
こっちを睨みながらきびすを返すようにして、吉岡は企画課へと入っていった。
仕事において既にやる気が失せていた俺は、そんな吉岡の姿を黙って見つめていることしかできなかった。
by eight_door
| 2004-08-18 16:57
| なかちっぱ